MiSHŌ Residency 02




                       Anca Croitoru  
                      アンカ・クロイトール
              ミクストメディア・コラージュ・アーティスト



                  
                     Takuya Watanabe
                              渡邊拓也
            映像インスタレーションヴィジュアル・アーティスト

                        Chiharu Mizukawa  
                                   水川 千春
                                   ヴィジュアル・アーティスト

ANCA CROITORU アンカ・クロイトール   EN

ルーマニア出身のアンカ・クロイトールは、バルセロナを拠点とするミクストメディア・コラージュ・アーティストでありワークショップ・ファシリテーターです。ダダイズムの生々しく直感的な精神に深く共感するアンカは、不完全さと真正さを受け入れ、コラージュを自己発見と感情探求のツールとして用いていてきました。
彼女の創作プロセスは自発性に根ざし、あらゆる制御から自由に心から直に立ち上がる創造的行為として表出します。拾い物やリサイクル素材のみを使用した彼女の制作では、あらゆる紙切れが新たな意味を与えられています。
藤野での滞在制作では、周囲の藤野の風景が自らの内面の風景とどのように共鳴するかを探り新たなコラージュ作品の制作に取り組みます。
また、地域に住む人々と出会い、手書きのメモ、パッケージ、チラシなど、様々な理由から保管された紙製品等を通して、地域の人々の物語の断片の収集を試みます。それらは個人的または共同的なコラージュ作品となり、身の回りの紙素材を通して記憶と感情を保存する創造的な方法として提示されることになります。
滞在中には、アップサイクル・コラージュ・ワークショップも予定され、滞在最終週のオープンスタジオでは、藤野での創作活動の成果を発表する展示を行います。

関連イベント
・9月7日 (日)「アップサイクル・コラージュ・ワークショップ」

申込みフォーム
・9月20日(土)・21日(日)オープンスタジオ
 参加型作品コラージュキャンバスを実施予定


 

渡邊拓也 Takuya Watanabe    EN

渡邊拓也は、 主に映像インスタレーションを手がける
ヴィジュアル・アーティストである。移動や労働、人と環境のあいだにある複雑な関係性を主題とし、コミュニティとの関わりや社会状況に対する綿密なリサーチを行う。個人の境遇や身体性、またはそれらを含む風景に埋め込まれた不可視の構造をひもときながら、権力と脆弱性の相互作用を描き出している。リサーチに基づく実践の中核として、これまで複数の国際的なアーティスト・イン・レジデンスに参加。主な滞在歴に、Delfina Foundation(ロンドン、2024年)、SAM Residencies(シンガポール、2023年)、 WIELS Residency Programme(ブリュッセル、2022年)、ARCUS Project 2019 IBARAKI(茨城)などがある。近年の主な展覧会に、《クリテリオム101 渡邊拓也》(水戸芸術館現代美術センター、茨城、2024年)、および《As Above, So Below》TOKAS Creator-in-Residence成果発表(TOKAS本郷、東京、2023年)などがある。
令和7年度文化庁新進芸術家海外研修制度に採択され、2025年から二年間、ロンドンを拠点に活動予定。

PROJECT FOR MiSHŌ
本プロジェクトは、「自然」という概念が持つ政治性を明らかにすることを目的とする。自然は中立的で普遍的な存在として語られがちだが、その意味や価値は歴史的・文化的背景の中で形成され、しばしば政治的意図を帯びて利用されてきた。  国内でも、オーガニックや環境保全といった開放的でエコロジー指向の言葉が、国粋主義的な言説と結びつく状況が記憶に新しい。「自然を守る」という提言は、何を守り、何を排除するのかを曖昧にしたまま、特定の価値体系を正当化する力を併せ持つ。その典型例が、ナチス政権下の自然保護政策である。1930年代のドイツでは「血と土(Blut und Boden)」思想のもと、景観保護や有機農業が推進されたが、その内実は民族的純化と国土防衛のイデオロギーと結びついていた。これは「自然」という概念が“善意”や“普遍性”を装いながら排除の論理に転化し得ることを示す事例であり、環境やエコロジーの言説が排外的秩序の装置となる危うさを物語っている。 
こうした概念的な枠組みをより現実的な水準で捉えるために、本プロジェクトでは藤野の里山環境の取り組みと
パーマカルチャーの実践の場をフィールドとする。藤野は、都市近郊でありながら多様な生態系と自給的コミュニティが共存する地域であり、同時に人の手による管理や選択が日常的に行われる場であるとされる。そして、パーマカルチャーセンタージャパンの拠点であり、日本国内のパーマカルチャー運動の中心地である。 
そこで行われる実践者の判断や経験は、どのような法制度・経済的要請・共同体的規範・個人的信条と関係し合いながらなされるのか。言い換えるなら、身体的なものが不可視の概念的な諸条件と分かちがたく存在するのか。そして、人間の行動のみならず「景観」という水準化から見つめた際に、どのような人間ならなざるものとの関係からその諸条件が決定されるのかというより複雑なものも視野に入れたい。 
主に実践者へのインタビューや見学、また可能であれば撮影や共同の可能性を模索したい。 
こうした実践の場に身を置きながら、自然と人間が出会う場における多層的な「自然」像を可視化することを試みる。

関連イベント:
・9月20日(土)・21日(日) オープンスタジオ
 
関連作品のスクリーニング、アーティストトーク(両日15時〜)













水川 千春 CHIHARU MIZUKAWA   EN
1981年大阪生まれ。2006年よりアートプロジェクトを中心に日本各地で制作を続ける。廃材や生活用水、海水などを用いて作品を制作。国内外で数多くのレジデンス、展示に参加。代表的な作品は、風呂の残り湯、温泉、雨、川、海の水などを使って描き、火に触れることで、水の中のものが焦げ出て絵が浮かび上がる、独自の「あぶりだし」技法で制作されている。これは、かつて日本文化の子供の遊びだったものを、日本現代画の画法へと昇華させたものである。

今回の滞在制作について

これまで20年ほど、廃墟や、閉鎖した工場、戦後の市場など、いろんな場所で滞在制作をして、その土地で採取した水を素材に使い、「あぶりだし」技法で描いてきました。今は、お隣の山梨県に住んでいて、藤野には5年間ほど馴染みがあるのですが、この地での滞在制作ははじめてです。今回は、藤野に流れる、秋山川、相模川、相模湖、そこから行き着く海まで、この場につながる水を素材に使い、この地とあらためて繋がりながら、あぶり絵を制作したいと思います。

関連イベント:
・9月20日(土)・21日(日)オープンスタジオ 
  20日(土)16時〜 あぶり絵ライブパーフォマンス